第13回文学フリマ@東京流通センター

去る2011年11月3日、東京流通センターにて行われました第十三回文学フリマに友達のヘルプとして行ってまいりました。

文学フリマに参加するのはこれで三回目。というかもう最初に行って以来連続参加してることになりますね。今回はお目当てのものも少なく、またミーハー心丸出しであれやこれや買っても結局読まないのも多いしなぁと思った…というのもありましたが、実際は年一度の風邪がこの時期にジャストミートしてしまい、イスの上で「点滴打ちたい」と何度もうわごとのごとく繰り返していたというとてもよろしくない体調のせいで色んなとこまわる事ができませんでした。頼むからこれ以上肝心なとこでダウンしないで俺の体。

さて、今回手に入れた本は二冊。同人誌は薄い本の割に値段高いよなーと感じることも少なくないのですが、今回はどちらも内容が充実していて、そこまで本の虫という訳ではない私でも思わず読みふけってしまう良い作品達でした。以下感想をば。

龍堂薫子著『鬼畜!ヤリマン道場 外伝』

前々回の文学フリマでの一番の掘り出しものだった『鬼畜!ヤリマン道場』の続編、しかも今回はEDでおなじみのフミコ・フミオ氏が寄稿している!ということでさぞかしおもしろおかしい奔放過ぎの性生活(と、無駄なセックスの後の独特の徒労感)が覗けるんだと思い期待して買いました。前半はその通りで、この人何でこんなDV男について行ったり行きずりの男と安すぎるセックスしてんのwそしてなんか同じような寄稿者増えてるしwフミコさんの性のトラウマも最低だわーwやっぱりこの人最高ー!っていうノリだったんですよ確かに。

でも、最後の「我が暗黒の処女時代」がもう…不覚にも泣きそうになった。ありがちな青春懐古ものとは分かっていても、人が本気出したらこういう文章書くよなぁというのがビンビンに伝わってきてしまった。痛みを伴う恋愛表現でこれに匹敵するのって『イエスタデイをうたって』ぐらいだと思うんだけど…というかハルちゃんがその後大人になったらこんな感じの女性になってしまうのでは?という恐るべき考えが割と説得力をもって胸に迫るようになってしまいました。嫌ですね。あとがきでは大分落ち着いたみたいなこといってらっしゃいますので幸せになってほしいものです。

『絶対移動中Vol.10 妄想×少女』

読む前のイメージとしては、「夏祭りの神社の境内で浴衣姿のキミ」「夏の海に面した下り道を自転車の後ろにキミを乗せて」「桜吹雪の下制服姿のキミと登下校」みたいなステレオタイプな像をモチーフにしたもの中心なのかなという感じだったのですが、実際読んでみるとそのバリエーションの多いこと多いこと。いかに自分の想像力が貧弱か、かつ知らない世界が広がっているかを思い知らされました。そして「少女」という概念だけでここまでの広がりを見せているという面白さは同人誌っぽくてすごく好きだなぁ、とトーシロながらに思います。以下感想というか作品にこじつけた自分語り。

・Lost girls cailing
冒頭のこの作品を読んで、そうだったこの流れもあったわと。思春期の少女同士の今にも壊れそうな関係、というのは現役大学受験の時のセンター国語の小説にも出てきて点数散々だったこともあって理解することを諦めています。将来娘持っちゃっても良い教育絶対できない自信が。

ケセランパサラン
ある日見かけた理想の女性を追い求める写真部の男子中学生のお話。最初これを読み終わった時は「ガス・ヴァン・サントの世界や!」と興奮しましたが、改めて冷静に考えてみるとBLのひとつのパターンに従ってるのかな、とあんまそのジャンル読んだこと無いながらに思いました。扱い辛い感情をポップに伝えてくれたし男の娘ブームの機運の後押しもあって一番読みやすく面白かった。

・小さな肩を震わせて
クラシックの運営って色々大変なんだよなぁ、と実際の友達などを思い浮かべながら読んだ。某ロッキングオン誌での「クラシックのアンサンブルは互いの欲望を抑制しつつ演奏するが、ロックは互いのエゴを演奏でぶつけあうものだ」的な線引きをこれまでロックファンとして安易に信じていたのですが、必ずしもそうはならないという。西洋音楽という同根のものである以上、その本質が近いといいなぁ。とても爽やかな読後感。

・伊国いろはさんの話をしよう
ボードゲームを可愛い先輩とやる、っていう異色の小説(だよね?)。こういう可愛いしぐさを妄想して楽しむっていうのは、楽しいけれども一つ間違うと病院行きだなと思いつつも楽しむ

・みーちゃんフラッシュバック
音楽活動やってた主人公やらアングラなクラブ文化に触れていたりやらで物語に身近さを感じた。僕は青年期に女の子を傷つけてしまったとかの経験の記憶はほとんどありませんが、しかしながらそういう後ろめたさを背負っちゃってる人は一定数いるのかも、と思うと…

・少女は荒野をめざす
この作品集のなかで一番ヤバいと思いました。というのも、同性愛・SM・暴力・精神病など退廃的な要素を含みながらも、それに対する情感をほとんど感じさせずにサクサクと物語を進行していることに衝撃を覚えたので。自分の乏しい経験の中でこれをなんとか例えるとしたら、タランティーノ映画というしかないでしょう。事物にまとわりつく意味性をある種放棄した世界での物語は、味気のないものに陥る危険性がありながらもうまくいくとこれ以上ない興奮につながるものです。この人はきっと聖なるものも俗なるものも走り抜けたところにある存在を描こうとしているのかなと。上述の自分の「少女」イメージからは最も遠い小説でした。

・佐喜子
怖っ。昔ヤンジャンだったかで載った鬼頭莫宏の読み切りを思い出した。無意味な殺人を計画していた少年がまた違う少年のさらなる計画で無意味に殺されていくやつ。


というのが出来る限りの感想です。今回買った二冊はそれぞれ充実しつつも、いい感じに繋がっていたのもポイントが高いと感じました。空想のなかの少女はもうおなか一杯なので、次は現実に現れてくれるといいなぁ。麻生久美子とか。

【追記】『絶対移動中Vol.10』がアマゾンでも買えるようになりましたね。

絶対移動中 vol.10 妄想×少女

絶対移動中 vol.10 妄想×少女

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  • 出版社/メーカー: 密林社
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