FUJI ROCK FESTIVAL'13


フジロックフェスティバルに行ってきました。

毎年毎年今年はもういいかなーとか言っておきながら、結局三年連続での参加となってしまったフジロック、今年は何と社会人の身分でありながら前夜祭含めて4日間がっつり参加してしまいました。今年から割とユルい部署に異動となったからいいものの、去年までだったら考えられんわーとかずっと思いつつ苗場で過ごした時間は貴重なもの。そんな私の不徳な行いを見てか、苗場の山の神は土砂降りの雨を3日間与え続けたのでした。贅沢のし過ぎはよくないなぁホント(震え声)

さて今回、メンツとしてはUSインディ―ロック厨の自分を喜ばすには充分ではあるものの、これは絶対に観たい!というように決定的なアクトはいず、イマイチ煮え切らないままの状態でした。しかし蓋を開けてみれば素晴らしいライブの連続。降りしきる豪雨は正直堪えましたが、それでも参加した甲斐はありましたね。以下、各アクトの感想なんぞを。


7/26(金)
・ROUTE 17 Rock'n Roll ORCHESTRA
今年のフジロックの始まりは企画ものバンド。やっぱりこういう豪勢なのって否が応にも盛り上がる。ロックインジャパンとかが強いのもこの辺だよなぁ、とかトータス松本が”バンザイ”を歌っているのを見ながら考えていたらどうやらそこがピークだったようで、その後はオールドナンバーが続くも明らかに観客が退却していくのを見、しょうがないけど何だかなあ、とちょっと心寒い思いをしたのでした。

あがた森魚
オレンジコートに強烈な日差しが照りつける中、あがた森魚を見た。普段ならとてもライブに来ないような若い客層に対して、フォークを基調とする自らの音楽を鳴らしていく。彼の高いミュージシャンシップを見た気がしたし、それを受けて盛り上がる観客の姿もとても嬉しいものだった。

・LOCAL NATIVES
1日目の中でも特に期待していたバンド。その期待に見事に応えてくれた素晴らしいライブだった。1曲目は2ndからの"you&I"。壮大さと独特のリズムが絡み合う曲による最高のオープニング。力強いドラムがこのバンドを特別な存在にしていると実感。2曲目はまたも2ndから"breakers"。反復を基本としつつ飛翔感のある音像を展開していく。この辺りですでに今回のライブが最高のものになると確信した。その後も個性派でありながら安定感を兼ね備えた彼らの演奏に心酔し続けた。この人たち、ライブやらせたら今のロック界で一番なんじゃないだろうか。若手の勢いのみならず、きちんと成長した姿を見せてくれて感動した。文句なしに今年のフジのベストアクト。

NINE INCH NAILS
この時の会場は、全く止まない豪雨に加えて、山向こうに5分に1回は雷が落ちる最悪の環境。そういやNINが解散するからって行った06年のサマソニの時も雨が降りしきっててだったんだよな…などとのんびり思い返す余裕もなく体を容赦なく冷やす雨に耐えながらNINの登場を待つ。
打ち込みの電子音が響く中トレント登場。その後各メンバーが徐々に現れては楽器を演奏していくが、いつものバンド形態ではなくステージ前方に一列に並ぶ形態。これを見てクラフトワークを想起した人は多いはず。新曲、”Sanctified”、新曲と来て徐々にバンドセットに戻っていくが、最初からメンバーの後ろにあった5枚の白い壁は適宜移動しつつ先鋭的な映像を流していく。機材を移動しながらライブを組み立てていく様は、トーキングヘッズの”Stop making sense”を思わせたりも。特に"Closer"での、ステージ上のトレントの顔がざらついた画質で白い壁に広がる演出なんかは、自分の自意識に閉じこもる歌詞とマッチしていて成程なーと感じました。その後は"Wish""Only""Head like a hole""Hurt"などド定番の曲へ。インダストリアルな音と内省的な歌詞に浸っていて、自分がこの音楽と一緒に青春を送ってきたんだなと痛感しました…。それはともかく、90年代のアメリカの病んだ部分を体現してきたトレントレズナーは、見せ方を含めて表現を先鋭化させることでライブに新しい活力を持たせようとしているのかも。映画音楽方面の仕事も好調なのに、再度NINとしてライブに戻る決心をしてくれたことは1ファンとして嬉しい限り。彼の意気込みを感じた2時間でした。あの空間を生で体感できたのは、すごく価値があったはず。


7/27(土)
トクマルシューゴ
この日は前日からの疲れがたたってテントでの休みを強いられたので、かなり遅れての参加。そんでヘヴンでのトクマルシューゴ。自分としては、もう何回かライブを見ているし正直ライブが音源を超えるタイプのアーティストではないなと結論付けてしまっていたためテンションも低めだったけど、そんな意識を正す素晴らしいライブだった。メンバー同士のかみ合ったアンサンブルが、曲の繊細さを壊さない程度に軽妙なグルーブを生み出しており、加えて熱量の高さも備えたべストの演奏。特に新譜の曲群を演奏するテンションが高く、バンド全体にとっていい雰囲気になっている。こんな演奏ができるなんて、何て幸福な人たちなんだろう。

DANIEL LANOIS
雨も止んで、ヘブンが暗くなった頃にラノワ先生がスタート。アンビエント系で行くのかなと思いきや、ギターボーカル、ベース、ドラムの最小編成。演奏されるのはコーラスをメインにした緩やかなロック。真夜中の澄み切った空気のヘブンの中、磨き抜かれた音の重なりによって集中力高く奏でられる美しい音楽によって、疲れ切った心は安らぐことができた。極上の時間だったな。激しい音でなくても、力強い音を鳴らすことはできるんだ。

・GARTH HUDSON
サポートの人が能力高いのでどうにか持ってる感じだったが、正直最初の一時間は聞くに堪えない感じだった。リズムを合わせない・合わせようとしないガースにバンドメンバーもイラついている感じ。リハーサルも満足に出来ていないようだった。こんな状態で俺の大好きな"Makes no difference"とか歌わないでくれー!と思っていた。
それでも最後の方は、しっかりと演奏してくれた。もしかしたら完全オリジナルかもとも思っていたけれど、ザ・バンドの曲をやるのに抵抗が無いようで"Whispering pine""Tears of rage""The weight""I shall be released"など往年の名曲を演奏。当時そのままの姿で、というわけにはいかなかったけれども心を感動させられるのに充分でした。大学の頃"フェスティバルエクスプレス"で観た、70年代の若者の心の支えになっていた人が今ここにいるんだな、と思うと感慨もひとしおでした。

・WILKO JOHNSON
あの無国籍な雰囲気が大好きなのでフジに来たら毎度クリスタルパレスに行くようにしているのですが、それにしても今年のパレスはかなり込み合っていたように感じました。そして中でも最大の混雑を発生させていたのがウィルコジョンソン。それもそのはず、彼は今現在末期ガンで余命が長くないことを宣告されているのだから。しかし実際のライブはそんな辛気臭い事実を微塵も感じさせないパワフルなもの。ボーカルの合間にステージ上を左右に動くウィルコは、昔の動画で見る姿よりも輝いて見えた。こんなに最高のロッカーを、神は奪っていってしまうのか。そう思うと心にくるものがあった。元来パブロックとしてデビューしたドクターフィールグッド。その中心人物だった彼を、バーを模した会場で見れたことはあまりにも幸運だったのかもしれない。そう思いつつ、2日目の夜は過ぎて行きました。


7/28(日)
YO LA TENGO
3日目の始まりはグリーンステージのヨラテンゴ。目当てのバンドの一つだったにも関わらず、寝坊&遅刻で途中からしか観ることができず。それでも"Sugarcube"やったし最後のノイズ祭りも彼ららしくてメインステージの聴衆に媚びておらず良かったです。朝一のアクトとして最高。

・TORO Y MOI
せっかく日本に来たマムサンを盛り上げないでどうする、とギリギリまで葛藤していたのですが、潔く諦めて見たトロイモア。これが大正解。キーボードを中心としたバンド形態
で演奏される切ないディスコは、夏の香りを感じさせて夕暮れ時にぴったり。バッキバキのビートと分厚いシンセの音にバッチリ飛ばされてきました。時折キーボードの上に置かれた機材によってDJライクな音が出るのもかっこいい。インディーの枠を飛び越えた音楽をやっていると思う。最高!

・DUSTING WONG
トロイモアからダスティン・ウォングへの一連の流れは、今年のフジでのべストだった。一人の音楽家がステージ上でギターを多重録音し、彼のみの宇宙を創りあげていく様を見るのはとても刺激的だった。日が沈みかけて行くシチュエーションという環境も、どこかノスタルジーを感じさせる音像とマッチしていたと思う。アヴァロンに集まった客は決して多いとは言えなかったが、届くべき人に彼の音楽は届いたのではないだろうか。終演後、物販に人が詰めかけたのを見てそう思った。もう一度ライブが観たい。

THE CURE
いやはややってくれましたよ3時間!その間演奏すこっしもぶれないしロバスミの声は出まくっているしでこのバンド化け物か、と思うことしきりでした。最初からどんより冷徹な暗黒サウンドを展開してくれていてこれは期待できる!と思ったのですが、それだけではなく"Close to me"等多彩な曲を含め、キュアーの全キャリアをぶつけてくるような選曲。中でも"Lovesong"は、Adeleのカバーも含めつい最近までよく聴いていた曲なので流れた瞬間心が持ってかれてしまいました。「どこにいようとも、何を言おうとも君を愛しているよ」という今時ドラマでも言わないような言葉。しかしそんな恥ずかしい心情もロバスミは隠すことなく歌い続けてきた。その狂おしい感情そのものがキュアーの神髄だし、熱烈なファンを未だに生み出し続けている要因でもある。どんなに不格好でも伝えるべきことはあるという彼の姿勢を見ることができて本当に良かった。俺も青いままでいよう。


以上ライブの感想でした。その他のことだと

  • フェス飯って値段そこそこする割には量全然少ないから結局2個位頼んじゃって食費がすごいことになるのよねーと今年も思いながら色々買ってました。今年はジャスミンタイのタイラーメンがクセがありつつも美味でした。五平餅や鮎も毎年お世話になっておりまする。
  • 今回で思い知ったけれど、山の装備重要。防水仕様のジャケットが二つダメになってしまった。でも皆カッパとか標準装備ですごく焦った。フジはやっぱ上級者向けだわ…
  • 今回キャンプサイトに知り合いがテントを立ててそこに泊まったけど、思いのほか良かったのでキャンプ関連に手を出してしまおうかと思った。あれ、何もしないでボケーっとしてるだけでもかなり良い。
  • でも4日間参加は贅沢すぎるし体力的にも2日間ぐらいで十分かな。

などなど。次参加するかどうかもわからないので来年のことなど分かりませんが、次は晴れるといいですねホント。死ぬかと思った。


最後に。今回のフジは、購入したEOS 60Dの初陣でもありました。それで撮った写真をば。