2013年を振り返ろう

こんばんはこんばんは。長らくお久しぶりでございますブログ主です。ブログをほったらかしといて申し訳あございません。とりあえず生きております。皆様におかれましてはますます御健勝のことと存じます。

2013年、私にとっては間違いなく転機の年でした。というのも職場で4月に部署が変わったからですが…強く希望して入ったところで社会人入ってからの部署を離れることに不安はあったのですが、いざ業務に従事してみればこれはこれで面白い…!というか去年までさんざ食らってた業務上の板挟みから解放され、集中して仕事ができる環境に身を置いたことでストレスが激減。外回りの仕事が多いのもそれまでのデスクワーク地獄から比べれば新鮮で楽しい。全く興味の無かった分野でありますが、モチベーションの面で言えば段違い。大学時代を含めたここ数年と比べかなり楽しい一年でした。

それでは以下毎年恒例、映画ベストランキングです。

1.アン・リー監督『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』

今年の一番は、アン・リー監督がアカデミー監督賞を受賞した作品でもあるライフ・オブ・パイ!現代における信仰の在り様についてCGを用いて想像力豊かに語ることに成功した圧倒的作品でした!客船が難破しボートの上でトラと長期間生活を共にするというたとい信じられないようなおとぎ話のようでもありながら、現代に生きる私達の生活の根底に流れるものを発見することができるストーリー。この作品が評価されたことは何かを信じる人にとっての希望でもある。アイマックスシアターで2回観たのはいい思い出です。

2.ローリーン・スカファリア監督『エンド・オブ・ザ・ワールド

エンド・オブ・ザ・ワールド DVD

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2位はエンド・オブ・ザ・ワールドデニーロの次に好きな俳優スティーブ・カレル(40歳の童貞男)の抑えた演技が光る一品。世界滅亡を目前に妻に逃げられ夢も希望も無くし何もかもを諦めた主人公ドッジの人物描写が、心にストンと来ました。そしてどこにも居場所を見つけられなかったドッジが、1人の女性との出会いによりようやくその魂を落ち着ける場所を見つけた瞬間、私の目にも涙が…。最初カーステで流れるビーチ・ボーイズを始め、サントラの秀逸さも特筆もの。

3.トマス・ウィンターベア監督『偽りなき者』

偽りなき者 [DVD]

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ディス・イズ・デンマークズ「ム・ラ・ハ・チ・ブ」!北欧の田舎で心静かに暮らす男を、根も葉もない疑惑が襲う共同体の負の部分を題材にした映画。この手の作品を観ると、社会にとって事実とは実際に起こったことというよりもむしろその共同体の成員が信じたがるものによって構成されていると痛感せざるを得ません。社会の信念から排斥されてしまった者に果たして希望はあるのか?観るのに少し勇気がいる作品ですが、観る者をそのドラマに没頭させてしまう素晴らしい作品でした。

4.ポール・グリーングラス監督『キャプテン・フィリップス

キャプテン・フィリップス [Soundtrack]

キャプテン・フィリップス [Soundtrack]

2013年ベストトム・ハンクスソマリア海賊に襲われ人質となった船長の行く末を描く。ここ何作かは不調か?と思われていたトム・ハンクスの面目躍如、時に冷徹・時に素早く判断をくだし、最後に人間としての弱さを見せる演技が最高。評判の良くないスティーヴ・ジョブスの映画よりもジョブスっぽさを感じました。無論海賊の役を演じた俳優達の素晴らしさについては言うまでもありません。

5.デレク・シアンフランス監督『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命

デレク・シアンフランス監督の快挙再び!『ブルーバレンタイン』と同じくライアン・ゴズリングとタッグを組んだ今作で、二組の父と子の因縁という難しいテーマについて生々しく人間的に描くことに成功。音楽も前回のグリズリー・ベアに続き今回はマイク・パットンというこれまたインディーロックファン垂涎の人選で、その音のタッチの繊細さも画の美しさをより一層引き立てていました。次の作品が今一番楽しみな監督。

6.クエンティン・タランティーノ監督『ジャンゴ 繋がれざる者』

タランティーノ監督がまたしても傑作を創り上げました。西部劇のプロットを基本に、虐げられていた黒人とドイツから来た賞金稼ぎの2人の行く末を描く。やたら派手な血飛沫や急なズーム、不自然な動きなどのタランティーノ節もさることながら、今作の一番素晴らしい点はアメリカ南部の濃い血脈をフィルムに焼き付けることに成功しているところだと思います。Jim Crochの"I got a name"が流れる場面での永遠とも感じられる精神性こそがこの映画を他のエンタメ作品と一線を画すものにしています。

7.ポール・トマス・アンダーソン監督『ザ・マスター』

新興宗教内での師匠と弟子の葛藤を描いたPTA監督の最新作。私達は欲望につられどこにいくことになるのか、欲望は果たして本当に自分が望んだものなのかとこの映画を観てからというものずっと考えています。そしてフィリップ・シーモア・ホフマン演じる新興宗教の教祖が、その奥さんにその精神を支配されていることを如実に示すあるシーンが忘れられません。人は生きていく上で誰かを自分のマスターとするものだ、との監督の言葉は正しいと思いました。

8.ジョシュ・トランク監督『クロニクル』

2013年最高の青春映画。ふとしたことから超能力を得てしまった高校生3人のドラマですが、その手に入れた超能力を使って高校生達がきらめくような一瞬を過ごすことができたのも束の間、主人公アンドリューがどんどんエスカレートしてしまい破滅してしまう姿が、それまでの不遇さが胸を抉るものだっただけに切ない。高校時代ってより多くのものを求めてしまうよなーと懐古的になってしまいました。

9.ジョン・S・ベアード監督『フィルス』

フィルス

フィルス

ワル役ジェームズ・マカヴォイ最高!スコットランドのどうしようもないクズ警官の生き様を描いた作品。主人公の策略がポンポンはまっていく様がどポップで上映中全く飽きない最高のエンターテイメント。余談ですが上映前会場では”ボーン・スリッピー”が流れていて、かつ本編ラストが”クリープ”だったので今一体何年だよと思いました。

10.ジョセフ・ヨシンスキー監督『オブリビオン

2013年最高のSFエンターテイメント。『スターウォーズ』『2001年宇宙の旅』『未知との遭遇』等の古典SF作品に敬意を示しつつも最新のギミックに溢れた心躍る作品。ラブストーリーとしても面白く、2人(?)が辿り着いたラストも愛の概念に挑戦的で、とても現代的でした。


以上10本でした。他にも面白い作品はありましたが今回は割愛。全体としては、アカデミー関連作品に当たりが多かったせいか大作のクオリティに安定感があった印象が強いです。ミニシアター系よりも普通にロードショー公開されてるものの方が面白かったですね。地方民としては嬉しいですが、たまに東京遠征する際の興奮も無くなりつつあるのが残念。

今年ワーストは『人類資金』。エンドロールで文部科学省の助成を受けている旨確認できましたが、教育や文化を考えてのことだったら俳優たちの英語の発音どうにかせんとこんな映画文化的に一銭の価値もないぜ、と言う気分に。『47RONIN』はその点頑張ってる俳優が多かったのでまだマシでしたが…

映画以外だと、今年は多く旅行に行った年でもありました。3月の瀬戸内国際芸術祭、夏のフジロックフェスティバル等々国内でも貴重な体験をしてきました。そして9月、念願だったユーゴスラビアに行くことができました!

サラエボドブロブニクも良かったですが、何よりセルビアエミール・クストリッツァの映画村を訪れることができたのは人生最高の体験でした。今思い返しても実感がありません。いずれにせよ自分の中のユーゴスラビアはまだ終わっておらず、近々リベンジに向かいたいと考えております。『石の花』と出会って何年か後に実際に行くことになるとは当時思ってもいなかったのですが。

2013年ベストソングはThe Nationalの"Afraid of everyone"。父親としてのプレッシャーに潰されそうになる男の曲(だとされているよう)ですが、ここまで神経にクる曲をかけるのは本当にすごい。ずっと聴いてました。

それでは映画・音楽中心の年末振り返りはここまで。来年は良い年になると良いですね。皆様が良い新年を迎えられますよう,心からお祈り申し上げます。良いお年を。

(noman29)
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・Take it,or leave it?
今年はどんな年だったかと人に聞かれたとしたら、ビックリする位印象の薄い年だったと私は答えるだろう。それ程にあっという間に過ぎた一年だった。

4月に部署を異動になった。元々やりたいと希望を言って入った課なので後ろ髪引かれるところもあったが、元部署ののストレスの多さに既に限界を感じていたので致し方なかった。そしてそれによって業務的には全く関係の無い部署で動くこととなったが、そこは人数の多い部署のため複数人で業務に取り組むという文化が根付いているところだった。当初の戸惑いこそあれ、それまで自分1人に責任を被せられたことがあまりにも多すぎたため、何かあったら誰かに相談できる体制に思った以上に体が馴染んだ。

それによって精神状態は、ここ数年と比べると比較的まともになった。むしろ今から考えると大学時代のほとんどをノイローゼ状態で過ごしていたのではないかとすら思う。転がる石には角は立たないと言うが、あまりにも生き急ぎ過ぎた感すらあるというのがこれまでの人生を振り返っての感想だ。

ただ、それまでの焦燥感中毒ともいうべき症状を亡失してしまったせいか、成長が止まった感はある。去年は忙しさの中にも勉強をして資格を取得したりする余力があったが、今年自分で自分を追い込むことはできなかった。それがいいことがどうかは分からない。ある人にはストレスが無い分いいじゃないか、と言われたし、またある人にはそれではダメだと言われた。多分これはどちらも正しいし、判断できるのは何十年も後になってのことになるだろう。

今私に起こっていることは正しいのか?それは抗うべきことなのか?それについてはずっと迷っている。地球上のどの民族にも存在すると言われる通過儀礼とは、日本人にとっては就活を含めた社会人経験のことを言うのだろうと解釈しているが、成熟を拒否してきた身としてはそれに抗いたいとも思う。ただ、個人的な感覚として、無責任な状況から周りの人間を批判するだけ批判しておいて自分は何もしない人間を、もはや信用できなくなってしまった。ツイッターで上から目線で社会批判を繰り返す大学生が、いわゆる社畜として何事もなかったように振る舞うか、どこにも行き場所がなくなってメンヘラ化しまった例をあまりにも多く見すぎてしまったのかもしれない。信用すべきはもっと別の道である。一般的なオッサン化とも、社会を知らなさすぎる学生とも違う道で迷っているのが現状である。民族・言語・宗教など一つの国というにはあまりにもアイデンティティが拡散しすぎていた旧ユーゴスラビアに向かったのも、それと関係があるのかもしれない。

ロバート・A・ハインライン月は無慈悲な夜の女王』は、地球の植民地と化している月世界の住民が革命を試みるという古典SFであるが、そこで展開されるのはスターウォーズよろしく「父殺しの物語」である。現在のシステムに極度の不満があるわけではないが、現在の支配を排除できうる可能性を持つシステムに出会ってしまった主人公が、月の行政府を倒し、地球の政府に宣戦布告を行う。その途中「月世界で暮らすのに何に課税する必要があるんだ?」とのリバタリアン的思想を持つ主人公は、自らが「盗んできた金」で今の革命軍を組織したいわば正統性を持たない存在であり、かつ自分が指揮してきた市民に自分があんなに嫌っていた課税を行わなくてはならない現実を思い知るようになる。それは一面では成長であるし、一面では腐敗だ。「無料の昼飯は無い!」はこの小説のスローガンであるが、何かを得るためには何かを失わないといけない。輝かしくイノセントなまま人生を過ごすというのは幼児的万能感以外の何物でもない。

通過儀礼論に関しては、アダム・スミスよろしく「見えざる手」を感じるときがある。絶対権力者を批判していた人間がいざその権力者を倒した瞬間に権力者の如く振る舞い始めるというのがそれだし、卑近な例で言えば中学の頃不良だった人間が20代でまともな人間になっていたりするのがそれだ。世の中うまく出来てるなと感じることが多い。

果たして自分に今起こっていることは成長なのか?それとも大人という存在への腐敗なのか?前述のとおりそれは今の自分には分からない。それでも今自分が信じられることがあるということが何個かあることは喜ばなくてはならないだろう。宗教はなくとも支持したい信念はいたるところに見つけられるし、社会人として目指すべき目標となる人間がいないこともない(もちろん反面教師も)。道は常に曲がりくねっているし、生きるとはいつも取捨選択だ。