デビッド・マッケンジー監督『パーフェクト・センス』

・最終兵器エヴァ・グリーン

久しぶりの映画での更新。といっても映画を観るの飽きたとかそういうわけではなく、映画も本数は観ているんですが正直今年なかなかヒットがない…正直映画観てテンション上がったのが何回もないのは異常です。というわけでゴールデンウィーク中も特にやることもないので映画を観てました。というわけで『パーフェクト・センス』。

パーフェクト・センス [Blu-ray]

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イギリスで悲しみを体験した後嗅覚を失うという症状の感染症が発生。瞬く間に世界中に広がってしまう。そんな中出会った感染症研究家のスーザン(エヴァ・グリーン)とシェフのマイケル(ユアン・マクレガー)。二人はほぼ同時に感染し、そして恋に落ちる。しかし感染症は強烈な感情体験とともに味覚・聴覚と次第に人間の感覚を奪っていく…果たして二人の運命は?というお話。

突っ込み所も多いとも思いますが、全体的に悪くない作品でした。一つひとつ感覚を失ってもそれなりに生活を維持しようとする人々に奇妙なリアリティがあって面白かったです。パンデミックものとしては昨年の『コンテイジョン』がありましたが、実際に観て思い出したのは『リミットレス』でした。恐らく、独特の映像表現と、自分の体に振り回される人物たちという要素に共通したものがあったのだと思います。飢えを感じたという表現のためにマスタード一気飲みしたり、それまで普通に暮らしていたはずなのにいきなりキレだしたりして、症状である感情に振り回されまた感覚を失っていく演技を見るにつけ何となくオーディションを生で観ている感覚があってとても面白かった。これ演技やってる人が見たら面白いんだろうなー。というかあのコミカル系同僚サイモンペッグじゃなかったのかよ!

ざっくり言ってどんどん五感が狭まっていく中でそれでも愛の深みにはまっていく人々の物語な訳ですが、自らの身体性を破壊してでも純粋な思いを相手に捧げる、という考えは愛という概念を考える際に割とポピュラーな思想のように思われます。それこそ昔からロミジュリ然り当人の身の破滅を伴うラブロマンスは多いわけですが、個人的に思い当たったのはサイカノですねー。

最終兵器彼女全7巻 完結セット  (ビッグコミックス)

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破滅へと向かう世界の中でそれでも狭い世界でで愛を確かめ合う二人、というシチュエーションがとても似通っていました。図らずも『パーフェクト・センス』が閉じた世界観での濃密な関係性というセカイ系のイメージを持っていてそれを違和感なく受容できるのは、ひょっとしたらこの漫画に影響された部分が多いのかもしれません。意外とこの漫画、私の世代への影響が大きいのでは、と思ってしまいました。

何よりこの主人公イチャイチャしやがってうらやまけしからん!とこちらに思わせてしまうほど魅力的なヒロイン。エヴァ・グリーンは初めてスクリーンで見たと思いますが、素晴らしいですね。こないだ観た『ドライヴ』でのキャリー・マリガンと同等ぐらいのヒットですええ。もう20代を捨てにかかった身としては、浴室で髭を剃ってもらってるシーンとか「ああ…」とか思ってしまいました。

画も美しいし、もし「こんな風な病気があったら」と後で考えるだけでも楽しい良作です。映画が進行していくに従って、美男美女のイチャイチャがエスカレートするのを観させられる羽目になるので、カップルで観るには丁度いい映画なのではないでしょうか。少なくともGW中に実家で男一人で観るべき映画ではなかった。