ブラッド・バード監督『ミッション:インポッシブル4/ゴースト・プロトコル』

ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』観てまいりました。

MISSION: IMPOSSIBLE-PH

MISSION: IMPOSSIBLE-PH

自分が映画を観に映画館に行こうとするときは、あんまりハリウッド的大作のようなものは避けて通っているのですが、これはかなり評判が良かったのと、サイモン・ペッグがチームメンバーで出ているという点から何気なしに観てみました。

【ストーリー】トム・クルーズが世界を救うために超頑張るよ!(以上)

でも超面白かった!トム・クルーズの俳優としての大物さから来る安定感がいい感じで出ていて、誰が観ても楽しめる娯楽作品になっていたんじゃないかと思います。この時代にスパイものなんてやってしまうと結構話に綻びが出たりしてしまうものですが、話の大味な感じがありつつも、練りこまれたストーリーやCGの時代を経た今でさえも普通の人間なら驚愕してしまうようなアクションシーンに体を張って挑戦しているあたり、制作にも関わったトム・クルーズの映画作りに対する誠実さが伝わってきてよかったです。破格の予算をかけたり凄まじい努力をしても報われないことが多い中で、努力が如実に効果を表しているので、この作品はとても幸福な状態にあるとさえ感じます。

序盤に敵の陣地に侵入するステルス・アクションが頻繁に出てきた時には、メタルギア通過者にはたまらんな!俺もどこかに侵入したい!とか無邪気に思ったものですが、ロシアのクレムリンに侵入する際のスクリーンのシーンなんかはとてもかっこよくて「うぉーそれ俺にもやらせろー!」と思ってしまいました。こういう思いを抱かせることに成功している時点で成功でしょう。

ブラント役の人も良かったなぁ。てっきり最初はチームにとって不安要素となる不穏なキャラクターかと思っていたらそうでもなくそつのない嫌みのない二番手を演じていて好感を持ちました。サイモン・ペッグがここにいるのは、まぁようするにニルヴァーナが人気出たとき次作にスティーヴ・アルビニ起用したようなもんでしょ、とは思ったのですが(笑)ユーモア要員として立派に役目をこなしてましたね。最後はど根性の行動するよりも役らしくハッキングの技術でパキッと決めてほしかったかも。

スパイ作戦に際してiPadiPhoneが効果的に使われていたのは、ちょっと不思議な感覚がありました。何故ならかつて夢見た魔法の道具というよりも、もはやその夢見ていた世界が半分現実化しているという印象を受けたからです。これはアップルもといスティーヴ・ジョブスの、iPhone等によく表されているヒューマンインターフェイスを重視した考えが、どれほどよく我々が考えてきた未来の技術とリンクしていたかを示しています。最先端技術といっても難解な思想や用語で構築された世界観ではなく、人間の自然な動きと機械が調和した感覚。かつて少年達に支持された「スパイ大作戦」のその続編と言ってもいい作品に、実際に存在する魔法のような道具が出てきてしまっているというのは感慨深いものであります。

それに関連して想起したのが、トム・クルーズ演じるイーサン・ハントとスティーヴ・ジョブズという二つの異なるリーダー像の違いです。イーサン・ハントは俗にいう完璧人間であり、最前線に立って任務を確実にこなしますし、「何故重要参考人を殺してしまったんだ!」と仲間を責めるブラントをうまく諌めて仲間をまとめ次の行動に繋げる、といった「調整型の信頼できる力強いリーダー」は皆に支持される人間性に溢れたキャラクターで、いかにも昔のハリウッド的な人物です。
一方のスティーヴ・ジョブズは今の閉塞感に満ちた社会を打開したフロンティアとして人気を得ていますが、昨年死去後出版された自伝や、テレビでのドキュメンタリーに触れた限りではちょっと人間的に難がある人で、周りの反対をものともしなかったり部下の案を何度も却下したりアイデアをぱくったと言われたりしてて大分強硬的で、彼の会社の商品を享受するにはいいけど、正直周りにはいてほしくない人というか…(笑)もちろんそういった意志の強さが現在の彼の地位を生み出し、人々に人気をもって受け入れられているわけですが、ザッカ―バーグといい必然的に周りとの軋轢を生むリーダー像が求められているとしか言いようがない状況になっているわけです。

そして、ジョブズにカリスマ的人気がある現在の社会状況のもとで、いわば旧来型のリーダーであるイーサンが今人気を得る*1、というのは少々ヘンですね。しかしながら空想の中でぐらいは衝突のないチームを体感したい、というのが皆の本音か(笑)


新年の初めに気軽に観るならこれほどちょうどいい映画はないでしょう。とにかく、少しでも観ようか迷ってる人がいたら、こんなちっぽけなブログ読んでないでとっとと映画館に観に行って欲しい!と言いたい作品です。

*1:今作は只今全米で過去作を凌ぐヒットを記録中 http://www.mtvjapan.com/news/cinema/20214 評判もこれまでになく上々