ジョナサン・レヴィン監督『50/50』

・ガンになったら正直どうするよ?というお話


『50/50』観てきました。ジョセフゴードンレヴィットもさることながらやっぱりお目当てはゼロ年代のクズ人間アイコン、俺たちのセス・ローゲン!という感じで期待高めで観に行ったのですが、その期待に違わぬ素晴らしい映画でした。

あらすじとしては、JGL演じる、ラジオ局に勤める生真面目な青年アダムがある日突然背骨のガン通告を受けるというもの。アダムは親友カイルとともに患者としての生活をエンジョイしようとしますが…という、この映画の脚本を描いたウィル・レイサーの実話をもとにした作品なんだそうです。そして制作はセス・ローゲンエヴァン・ゴールドバーグだヘイト・ザ・ポリス!

この映画、とにかく主演のジョセフ・ゴードン=レヴィットセス・ローゲンの二人の熱演抜きには語れないでしょう!

JGLは『(500)日のサマー』でちょっと距離を置いていた俳優だったのですが*1、今回はすんなり感情移入出来るキャラになっていましたね。最初のランニングしているシーンで人のいない横断歩道でもいちいち止まる位真面目で、かつ人との関わりを一定の距離を持って行っているというとても現代的な20代男性だなーという印象をもちました。

(なんかどの写真でも変わり映えしないねこの人)

そのアダムががん宣告を受けて戸惑いながらもなんとか日常を過ごそうとし、通院生活を始める。ためらいつつもカイルと一緒にがんをネタにナンパしたり、抗がん剤治療をするグループとも仲良くなったりして割と悪くない事態も起こるのですが、しかし日々の不安は水銀のように心に蓄積していく。そして挙句の果てにはがんとなっても「あなたのそばにいるわ」といってくれたアーティストの彼女にも浮気されてしまう。浮気をきっかけにさらに人と疎遠になってしまう心情が抑えた演技で表現されていて、患者でもないこちらにもそのヒリヒリした心境が伝わってくるかのようでした。最後の手術の前の車での行動は、それまでの抑えていた不安な気持ちがついに爆発する瞬間であり、同じ様な気持ちになっていたこっちも顔面がぐしゃぐしゃになるかと思うくらい感極まってしまったシーンでした。


セス・ローゲンも基本ゲス会話と行動しかしないキャラだったため当初は「この野郎…」と思わざるを得なかったのですがしかし最後にかけてどんどんいい奴ポイントが上昇していくのはとてもいい。おちゃらけといて最後実は…という描写もダンディズムが効いていてすげー好きだぜ!というかセスちょっとおしゃれになってる…?

観終わった後の爽快感はなかなかのものでした。ラストは上述の『(500)日のサマー』の親和性を感じさせるものですが、人生はそう悪くない、と人生どんづまっている私でも少しばかり思わせてくれる程ですから、何か心に重いものを感じている人なら通じる程の普遍性をもったものだと思います。最後にリア充となりやがったアダムですが、しかしながらそこに至るまでの苦しみをスクリーンを通じて体験した私たちならこんな風に笑顔で彼を見送る事が出来るはずです。

ジョセフ・ゴードン・レヴィット爆発しろ!



そうそう、Radioheadのhigh and dryがかかる場面がいい感じでしたね。アンチ『The bends』なのですが、普遍的な繊細さとレディヘの音楽のオンリーワンっぷりががん宣告された主人公の心細さを代弁していました。ちょっとベタだったけど(笑)

*1:だってズーイー・デシャネルを追いかけるのに共感できなかったし