マーティン・スコセッシ監督『タクシードライバー』

・永遠の中二病映画、但し大人向け

どもども。

現在絶賛ダメダメ新社会人をやっとります。職場では表面上は良くしてもらっていますが言葉の裏では使えない新人だな的な風を上司に匂わされ、コミュ障のためにホウレンソウがロクにできず電話が来てもテンパってしまい結局全然成長していないのをひしひしと感じながら定時までキリキリしつつ、自宅では一日一本映画を観てその後ゲームやって寝て起きてまた職場に行く、という何とも狂気的な毎日を送っています。ニートになりたい…

さてそんな1ミクロンも価値のない、底辺労働者な日々を送っている私が、愛してやまない映画があります。そう、『タクシードライバー』です。

一週間ぐらいずっと観てたりしてます。一回これ劇場で観てみたいもんだなーでももう無理だよな、と思ってたら「午前十時の映画祭」(http://asa10.eiga.com/)なるイベントを知りまして何と市川の映画館でやるじゃん!ということを知り、休みもらって行く事にしました。そのほかにも都会で色々映画を観てそれらが全部アタリだったので嬉しい限り。あとで書くかも。

当日。こんな平日の午前に古い映画観にくるのなんて珍しいから下手したら俺一人かもな、と心の奥で思っていましたが映画好きの紳士&淑女で席は半分ぐらい埋まり、若い人もちらほら。昔のフィルムだからちょっと傷とか付いてたりして…とかそんな心配もしていましたが高音質&高画質で大満足。ジャズの音色が高音質で鳴り響くのはもちろん、トラヴィスがベッツィーを最初に口説く所で、後ろで挙動不審にしてる男の姿が鮮やかになっていたりしました(笑)。本当に観に行って良かったという感想をもちましたよ。

ベトナム戦争から帰還したものの、不眠症となってしまったトラヴィスタクシードライバーの職を得る。しかし不眠症は治らず職場の人間とも馴染めず、挙句の果てにせっかく上手くいきそうだった女性とも破綻してしまい追い詰められていく。そんな中一人の少女娼婦と出会った彼は…?というお話。

やっぱり、どん詰まったトラヴィスが鏡の前で"You talkin' to me?"と語りかけるシーンが印象的です。自分と同じようにイラついている人間が今目の前に居る、という印象をどうしても持ってしまいます。あの、俺と同じような男が時と場所を超えてそこに居る、"You"が間違いなく自分のことを言っているという臨場感はその辺の映画にはない特別さを感じさせてくれます。

むしろこの映画を「ワケわかんない」と評価する人がいるのもそこまで分からない話ではありません。何故ならこの映画は人生うまくいってない人にしか分からない作品だからです。この映画が、かつてのベトナム戦争まっただ中で作られたことは押さえておいて損はない前提です。人々が生活において依拠すべき、確固たる信念の基礎のようなものが無かった。そんな社会状況では皆生きていくにもピリピリせざるを得ません。つまり今生きてて幸せ!とかいう人よりかは焦燥感を抱えた人に対してしか伝わらない作品なのです。緊張感にまみれた当時で、現実の閉塞感を如実に表しながら、それに対して暴力的ながらもファンタジックなブレイクスルーを示した本作を観るのはとても刺激的な経験だったろうなと想像してしまいます。

女性との最初のデートでポルノ映画に行ってしまうトラヴィスを皆は笑いますが、しかし同じ様な失敗をしたことがある人間は一定数いるでしょう。かくいう私も高校生の頃皆の注目を引きたくて昼の放送に変態プログレを流していた黒歴史があります。また、車でもセンスある人間と思われたくて洋楽をかけ助手席の相手に「何この変な音楽」という顔をされ微妙な空気になったことも一度や二度ではございません。そんなだから妙にひねた大人になって上司とも同期ともうまくコミュニケーションとれなくてひたすらツイッターでブツブツ言ってるような人間になっちゃったんでしょうね。ほっとけ。

ともかく、これだけ自意識の肥大やらハリネズミのジレンマやら個人主義の行き過ぎやらで、「孤独」というものがクローズアップされている社会となっている現在、この映画はむしろ今観られるべき映画としてその価値を全く失っていないと思います。何かもう今閉塞感バリバリでとにかく俺はこんなんじゃないんだよ!と鬱屈している人全員が観るべきでしょう。現実の幸せに恵まれて、孤独を知らん奴にこの作品がわかってたまるかボケ!だから俺の隣でイチャイチャしつつこの映画を観てて、終わった後「いやーよかったわぁー」と和やかに会話してたカップル、お前らは(以下省略されました)

http://kousyoublog.jp/?eid=2493
ちょっと前のホットエントリーですが、読んだ当時とても感激した記事。多くの歪曲さを産み出しながらもやっぱアメリカの文化って面白いなーと思ったのですが、デニーロが『タクシードライバー』出演した当時ってもう『ゴッドファーザーpartⅡ』でアカデミーノミネートとかされてるし全くの無名ってわけでもなかったんじゃ…?