デレク・シアンフランス監督『ブルー・バレンタイン』

・童貞に毛の生えた程度の恋愛経験しかない非モテが、結婚について語るよ!

大学時代ロクなことが無かったけど新社会人になれば新しい出会いが待っている、そう思っていた時期が僕にもありました。

Blue Valentine

Blue Valentine

カップルに結婚の現実を突き付ける映画でとても面白い、ということで好きなバンドのライブの日だったということもあり、上京ついでにバルト9にて観てきました。*1

すごく良かったです!公開劇場が少ないのがもったいない作品ですねこれ。観ていてハッピーな気分になる映画ではありませんが、そんなに人を選ぶという種類のものでもないので色んな人が観るべき(そして、この作品に即して意見を言うべき)だと思います。

関係が既に冷え切ってしまった夫婦が、そもそもどのようにして結婚に至ったのかを昔の映像で見せ、また次には現状に切り替わったりして時系列を交互にシャッフルして見せる構造になっています。映像も時折美しかったりします。*2

おそらく多くの人が言及しているでしょうが、この映画の全体を貫いているのはある種のリアリティです。昔は良かったんだろうけれども今は冴えない仕事に就いていて昼間から酒を飲んでいる夫と、これまた昔は可愛くて、今も結構な美人なんだけど何だかちょっと疲れちゃってる風貌をした妻。その二人の関係性は、最初の全くかみ合わない喧嘩寸前のやり取りで嫌という程伝わってきます。

この夫婦が迎える結末のシーンは鮮烈。何故なら、今現在ラブラブなカップルでさえも、いつかはこのように夫婦の関係を嫌ってしまうような状態になってしまう可能性があることを容赦なく感じさせてくれるからです。新しさを感じるという類のものではありませんがしかしそれまでに散々見せつけられてきた、「自分の周りにもこういう「昔は良かったんだろうなって」感じの夫婦、結構いるぞ…」感が、個人的に恋愛による幸福感を望んでいようとも、残酷な現実に行きついてしまうという着地点に納得感を得させてしまいます。そう、皆離婚したくて結婚した訳じゃないんだよな、と。

自分としては、恋愛とかそういうの無縁の人生歩んできた人間ですので*3、この映画に対しては「良く言ってくれた!」という言葉に尽きます。高校生の頃メルアドを「お互いの名前+love」みたいにしてたカップルもその後女の方がその男のではない名字に変わってたり、大学でもきゃあきゃあ恋愛ばっかりいってるようなやつぁ大体あれでしたしね。エブリシング・フロウズ。うんうん。

しかし今思うとそんな自分でも心の奥底に引っかかるものがあったなーと。結婚なんてそんないいもんじゃないよ、というメッセージをそうだそうだ!と受け取ったあとでも何だかショックを受けてる自分がいて、ああ俺まだロマンチストだったな、恋愛マルクス主義とか標榜してたけどまだまだ甘ちゃんだったんだなとも思いましたよ…

大学の頃、そんなに考えが合う感じでは無かったけども単位くれるから出席していた授業で教授が、「結婚とは、感情の一致ではなく一種の契約である」と言っていたのが何となく心に残っています。そうだよなー感情なんて一瞬のものでしかない訳だからむしろ制度として結婚を捉えたほうが健康的ではあるかもなー、と様々なダメな人たちを見てきた、というか青春時代に素晴らしい感情の一致を共有する機会に恵まれずに、『秒速5センチメートル』を観た後よくわからない焦燥感に突き動かされて夜のテクノパーク桜を不審者よろしくグルグル回っていたというような大学生だったワタクシは当時思ったのでした。

結婚って最近の作品においても最終的なゴールとして扱われていることが多くて、これはやっぱりそれに対するアンチなのかなと思います。お互いに最高のカップルだった二人が結ばれてハイ結婚ハイ幸せ。そうなることを多くの人が望んでいますが現実は結婚した時から問題スタートなんですよね。そんで重要なのは、気が合うとかそんなの以上に一緒にいる理由が必要なのかなと。

結局、「結婚」という良く分からない制度について未だ結論が出ていない自分にとってこの映画は試金石となりました。しかし、じゃあどうするのか?という問いに対して、未だ結論は出ておりません。おそらく一生愛に恵まれない気もするので、それでも生きていけるようにして行きたいとは思ってはいますよハイ…

因みに、最近親に「結婚したい人がいたら(未だ女っ気のない)兄貴たちに遠慮しないでしちゃっていいんだからね?」とよく言われているのですが、自分にも彼女なんて出来そうもない場合はどうしたらいいんですか。


音楽はGrizzly Bear。サントラが欲しいくらいに結構いい。

*1:始めて行きましたがあそこすごいっすね。普段地方のレイトショーでばっかり映画観てるもんだから大勢の観客と観るのは抵抗あるんじゃないかな…とか思ってましたけどこの映画を選ぶ人は良い観客の人たちばかりだったのかとても楽しく鑑賞できました

*2:「将来への不安の象徴」として夕日が使われているのを初めて見たかもしれない。美しかった。

*3:ていうか多分これからもさ!