Fleet Foxes『Helplessness Blues』
こんばんは。日曜の夜如何お過ごしでしょうか。僕は大分憂鬱です。毎日が土曜日だったら戦争もなくみんな平和に暮らせると思うんだけどね…
さて、普段はうわごとのようにUSインディUSインディ言ってる私ですが、最近はあんまり話題作といったものを聴いていませんでした。ですがFleet Foxesの新譜が視聴してみたら良かったのと、アマゾンでとても安く売っていたこともあり思わず購入してしまいました。
- アーティスト: Fleet Foxes
- 出版社/メーカー: Sub Pop
- 発売日: 2011/05/03
- メディア: CD
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今回のアルバムについては、壮大さを感じさせるコーラスワークとシンプルなアコースティックギターを中心にして聴かせる構成はデビュー作であった前作と共通しています。しかし前作はそれこそ本当に地を駆けているような力強さを持っていたのに対して、今作ではいささか内省的というか、サウンドが抽象性を帯びてきていると感じました。
走っている地面の匂いがするような硬質なサウンドから、美メロによる自分の心的要素の重視というテーマへの移行。「無力感のブルーズ」という題名にも顕著に表われていますが、実際に存在するような空間よりも一人の個人的意識に今回フォーカスがあてられているかのような印象を受けます。歌詞についても主に人生について歌われている曲があったりと、どこのCSN&Yだ!と言いたくなるような昔のフォークを想起させる要素があったりしています。
普段部屋に引きこもって、デスキャブフォーキューティー等自分の半径10m以内のことばかり気にかけているような曲ばかりを愛好して聴いている私からすれば、このフリート・フォクシーズの変化は歓迎すべきものだといえます。しかしこの変化に違和感を覚えるファンの方もいるのではないでしょうか。元々ロックシーンでそこまで大っぴらに扱われてこなかったコーラスを全面的に用いることで彼らは新たな音世界を提示することに成功した訳ですが、2ndにきてインディーロック風に媚びるのかよ、という感じになってもおかしくはないですね。
しかしこの2ndでの「鬱々とした感じ」の採用は、「全部同じ曲に聴こえる」というフリート・フォクシーズに対して行われがちな批判への一つの答えのような気もします。
彼らの、コーラスワークの重視に代表されるような音楽性は彼ら自身の「発明」であります。しかしその独特の個性のためにそれぞれの曲自体の差が無いかのように聴こえてしまう、いってしまえば飽きられやすいという危険性は恐らくファンであってもうすうす感づいていたのではないでしょうか。
その背景を踏まえて今作を聴いてみると、フリートフォクシーズの新たな側面が見えてくるように感じます。"The Shrine/An Argument"では曲の中でパートが分かれているかのようになっており、静かな感じから一転エンドルフィンが出そうなくらいの多幸感へ持ってかれます。曲調の射程に幅広さを持たせた結果、今回のアルバムで彼らのオリジナリティを保持したまま新しい音の世界を開拓することに成功し、聴く度に興奮できる作品を生み出すことが出来たと私は考えます。
時に全てが許されているかのように祝福のコーラスで全体を包み、また時にニールヤングよろしく一人で内省的なフォークを奏でる。その振れ幅の広さが今回の新譜での実験の成果であり、また楽曲の表現の多様性をもたらしているといえるでしょう。ぜひとも野外のフジロックで聴きたいですね。