神山健治監督『攻殻機動隊 SAC Solid State Society 3D』

攻殻機動隊3Dが大ヒット御礼のためつくばでも公開、となったため元々好きだったアニメだったこともあり観てきました。

観に行って良かったです。これを観るのは二度目なのでストーリーについていくのに余裕を持つことが出来ました。また、3Dに対しては何となく画面が暗くなってしまうしそれまで観た中でも、これは3Dでなければ!というのになかなか出会えていない*1という経験からあまりいいイメージを持っていなかったのですが、これに関してはバッチリでした!電脳等のITテクノロジーの描写と3Dの相性がかなり良くて、実際に攻殻のような技術が実現されている社会を体感しているかのような感覚を得ることが出来ました。アニメ制作会社は今後とも3D技術開発をガンガンやって欲しい。

でもやっぱり最先端の社会をベースにした作品というよりかは、ちょっと前のアニメかなと思ってしまいました。ガジェット関係も原作に忠実なんですがしかし何かこう古い感じがあって近未来の社会を観ている!という気風をイマイチ感じることが出来なかった部分はありました。アニメの表現技術が著しい進化を遂げている中で、その賞味期限も短くなってきてしまっているのかもしれません。あと、素子の「私が九課を去って二年になる…」という台詞から、茅吹総理は少なくとも二年以上勤めている訳ですが、聞いていて思わず「長いな」と思ってしまいました。ポンポン総理が辞めていく今の社会状況の中、さらに複雑な、というか権力者の足元をすくってくる要素が増大してくるであろう未来では長く総理を務めるのは難しいだろうなーと。

やはりこの作品を観る目が、自らの立場によって変わってきています。自分が攻殻を良く観ていたのは2〜3年前のことだったのですが、その当時のお気楽ヒッキー学生時代と比べて、ペーペーでも社会人やってると「組織」に対する感慨がだいぶ異なったものになっているのに気付かされます。作品内では公安九課や省庁は重い存在となっている訳ですが、あんなもんじゃないよ!何も出来ないよホント!

あと、音楽がやっぱり高品質で、それが映画館のスピーカーで再生されているのがいいなと感じました。サラウンドだから全体的に縦横無尽に鳴らされていて、曲によってはパーカスの響きが映えていたり。コレ菅野よう子は制作してて楽しかったろうなーと想像させられます。

しかしこんな脚本書く人の頭はどうなってるんでしょうね。少子化問題に対してこんな案を提示するというのは時事に通じた上でとんでもない想像力がないと不可能ですし、省庁とかの描写に関しては誰かスタッフに行政に通じている人いるんじゃね、と思わせるぐらい説得力があるものとなっています。その複雑な要素群をブラフになっている暗殺事件ふくめ一つの物語としてまとめているのは見事の一言。ここまで面白いものを作ることが出来るのか!と唸らされるしかできないです。

というかこれは、観て色々語りたくなる欲望を駆り立てる映画なんだなと。メディア展開含め様々な要素を絡めた作品なので、攻殻SACとはある種中継地点的なものだったのかもしれないと久しぶりに触れて感じました。*2

*1:塔の上のラプンツェル』は良かった

*2:感覚的には『OKコンピュータ―』を想起しました。